1. Kim Elena Lonescu 生産地の労働問題について 2016 RE:COシンポジウムにて

Kim Elena Lonescu 生産地の労働問題について 2016 RE:COシンポジウムにて

2016年にアイルランドのダブリンで開催されたRE:COシンポジウムにて、アメリカスペシャルティコーヒー協会のKim Elena Lonescu(SACC サスティナブル委員会 委員長)が講演をしました。
この講演は、コーヒー農園で働くピッカー(コーヒーチェリーを収穫する季節労働者)の労働問題にフォーカスしたものです。今回はその内容を要約してご紹介します。

 

私はこれまで中規模ロースターのグリーンバイヤーとして何度か産地を訪れてきました。
当時は産地で働き手と会話をすることは無く、あっても写真を撮っても良いかを尋ねるくらいです。
皆さんもそのような感じではないかと思います。

 

コーヒー生産地はどこの国も大体同じような状態に置かれています。
労働力の過疎が短期的に最も大きな問題です。

 

今年(2016年)の1月にニカラグアに行きました。ニカラグア最大の新聞の見出しにはこう書かれていました。
「ヌエバセゴビアでコーヒーの実が収穫されること無く落ちていく。ピッカーは給料の良いホンジュラス
に移っているようだ」
しかし、前々からニカラグアからピッカーが移住していると聞いていたので、なぜそんなに大きく
取り上げられていたのか分かりませんでした。
そして一週間滞在して生産者へインタビューをおこないました。

〈生産者1〉

  • 【労働力は大きな問題。若い人たちが昔のようにコーヒー農園で働こうとしたがらない。または賃金の良い農園に行ってしまう。最近では状況の良いホンデュラスに行ってしまう。】

〈生産者2〉

  • 【知り合いのコーヒー農園経営者は、ピッカーの不足により農園を手放している。コーヒーは安過ぎると。】

〈生産者3〉

  • 【Cプライス(NYC)が下がると、農園でのコスト上昇につながる。そしてサビ病、気候変動、干ばつなど、どうにもできないことも起きている。】

 

かつてはニカラグアのピッカーはコスタリカに行っていましたが、現在は収穫量増大に投資をしているホンジュラスに向かっています。ピッカーなどの、時間給ではなく摘んだ量で支払われる労働者はなおさらです。エルサルバドルは収穫量は少なくなっていても、米ドルで支払われるので、依然として魅力的です。近年の米ドルは、ニカラグアの通貨より断然価値があるからです。
世代の移り変わりも関わっています。若い人はコーヒーで働く以外にも選択肢があることもあり、親も他の仕事を勧めます。

 

サビ病の影響もあります。1800万袋が2012~2015年の間に中米で失われました。これにより、生産者の収益が30%~80%減少、そしてピッカーの数を減らすことにつながりました。その後で収穫量が戻っても、ピッカーは既に移住してしまっているのです。
各国の政府も、労働力の過疎の問題に気付いていないわけではなく、グアテマラでは最低賃金を58%増加させました。このインタビューをしている頃のニューヨークC プライスは1.15ドルほどで、経営者にとっては、コストを十分まかなえるものではありません。特に高品質コーヒーの生産者にとってはです。

 

経営者は生産者に高い賃金を払うべきだとは分かっていますが、その余裕がないのです。
ICAFEのデータでは、生産コストの62%が人件費、肥料が17%、その他が22%となっています。手作業が多ければ、さらに人件費が上がります。

今のところは先行きは暗そうですが、個人的にはそうは思っていません。我々の認識の低さがあるということは、意外と解決策は手との届くところにあるように思います。アトランタで講演をした時には、公演後に、大小様々な会社から、自分達には何ができるのかという質問をいただきました。

現実的に始められることは、関わりのあるサプライチェーンに質問をしていくことです。トレイサビリティが最初です。どこの農園から来ているのかを知ること。次は生産者オーナーに質問をする番でしょう。労働者の居住環境、労働者の労働時間を記録しているのかです。これに関してはオーナーにとっては重荷に感じるので、後々の質問にするのが良いでしょう。
こういう質問は、罰するためや暴いていくためではなく、一緒に関わっていくことや、協力していくことを伝えるためにすることなのです。法律的にも、評判的にもリスクを回避し共有するためです。知らない、ということで守られることはもうありません。またこの過程で、生産者が何年も抱えてきた苦悩も共有できることでしょう。
言語の問題はありますが、労働者と直接話すのも良いでしょう。

このような問題を1人で解決していく必要はありません。
Ethical Trading Initiativeなどが様々な情報を与えてくれます。

労働者に聞くことにより、驚く結果が得られることもあるでしょう。
このグラフはコロンビアのピッカーが、ピッキングする農園を選ぶ理由の優先順位表しています。
順番は下記の通りです。
  1.  食べ物
  2.  コーヒー区画の状態
  3.  労働者の管理の良さ
  4.  給料
  5.  宿泊所の状態
  6.  その他
  7.  友人と一緒かどうか
  8.  家からの近さ

これらは4月に聞いた情報です。この順番に私はとても驚きました。ですが、実は1月にニカラグアでおこなったアンケートを聴き直したら、ニカラグアでも同じことが言えたのです。私がしっかりと聞けていなかったのです。

これらのことを一度に改善を求めることはできませんが、少しずつ前進していきましょう。

以上

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